洗濯機を机にベランダから

机じゃなくてベランダの洗濯機にパソコンを置いて書いてます。どいせ洗濯機の上で作られた記事だって、さらっと読んでもらえると◎

社会人1ヶ月目で思うこと。いっそヤモリになりたい。

仕事で、そこそこストレスフルなことを今している。
電話での営業だ。
個人のお宅に、「もしもし」と電話をかけて商材を売る。
タイミングは、奥様が夕ご飯を作っていて油から手が離せないときかもしれないし、赤ちゃんをあやしているときかもしれない。
もしくは日曜日ゆっくりブランチをしているところかもしれない。
各家庭の日常が流れる場所に、プルルルと電話が繋がる。
お客様は、うるさい着信音に動かされて「なんだろ?」と思いながら慌てて受話器を取る。
そして耳を傾けるなり、日常では気にもしていなかった商品の説明を勢い良くされる。この流れが、テレマだ。
DMやCM等々の広告方法では届かなかったお客様に、直接リーチすることができる。
潜在的な客層にPRすることができる。
これが、テレマだ。
一件一件電話をかける作業は地味すぎて、この2017年にそんな仕事まだあるの?って感じだが、DMと比べて生の声を届けられる点や、直接コミュニケーションが取れる点から、遥かに受注に繋がりやすいし、こんな時代だからこそ、テレマに力を入れ始める会社も増えた。

ただ、イメージしただけで、お客様にとってあまりウェルカムな電話ではないのが分かると思う。
元々欲しいと持っているお客様は少ないし、ウェルカムな状態ではないことも相まって、話を聞いてくれる人はごく僅かだ。
だから、アポインターにとって「300コールにつき2受注」というのが常識なのだ。
つまり、300コールかけて、298人には断られる。
断り方は、本当に様々だ。
ただ、口調や語調の強さ、断り文句は違えど、だいたい4パターンに分けることができることに気づいた。

開口一言目でガチャ切りか、こちらの話を遮ってnoと返事をするか、必要か必要でないか話を聞いた上で冷静にnoと判断するか、クレームの4パターンだ。

 

いいアポインターは断られ方もうまいということで、研修中も、この4パターンにメンタルをやられないように「断られ方の練習」を散々した。
先輩達からは「お客様の言葉に怒らない・悲しまないと前もって決めてから出勤している」とか「辛いと感じても、その中に楽しみを見つける」とか「感情はただ外で起きてることに反応しているだけだから、反射的なものにすぎない」とか「お客様は鏡だから、愛想のない対応をされてムカついても、こちらが笑顔でいれば、笑顔が声を伝って、相手も必ず笑顔になってくれる」とか、いかに平常心で笑顔でいられるかのアドバイスをたくさんもらった。
それに、受注率のいいアポインターは、やっぱりいつ見ても笑顔で電話している。
テレマをするにあたって大事なことは「笑顔」と「気持ちよく断られること」なのだ。

 

でも、実際にやってみて、それはモンスターの所業や!と思う。
1日に、298回、ネガティブな対応をされるのはきつい。
自分では気がつかないうちに、営業しているくせにお客様のペースに合わせてしまって断る方向に導いてしまったり、クレームにイライラしてしまったり、雑な対応に悲しくなったり、1コール1コール感情が揺れてしまうのだ。

 

名乗っただけで「もう二度と電話をよこすな!」と言われれば「お前になんかこっちだって二度と電話するかよ!ばばあ」と思うし、「騙されないからな!」と言われれば「騙すために仕事なんてしてない!私はこれでご飯食べてる!」と反発したくなる。
ガチャ切りされれば、行き場を失ったエネルギーが、もやっと不完全燃焼して腐る。

 

こんなに自分って、感情的だったっけ、とほほ、と帰り道肩を落とすのが毎日だ。
数字を取れるアポインターへの道のりはまだまだ長い。頑張らねば。

 

でも、違和感もむくむくとある。
っていうか、そもそも自分の感情を抑えてコントロールしたところで、それって面白いの?ってことだ。
今の仕事は、数字を取るために、負の感情に流されずに平常心で営業し続けることがとっても大事だけど、それをプライベートにまで持ち込みたくない。
悲しいときは泣き叫びたいし、怒ったときは思いっきり睨みつけたいし、文句があればネチネチと言いたい。
嬉しいときはスキップしたいし、楽しいときは「ぶははは」とのどちんこ見せて不細工な顔で笑いたい。
嫌なものは嫌だし、いいものはいい。好き。
自分の感情のままに振る舞いたい。
酔っ払ったときは、男女問わず肩を組みたい。
もっと正直に言葉を吐きたい。
衝動的で、野性的でありたい。
最近は、大人版子供でいたいのだ。すごく。

 

大人版子供って、守るものは守り、破るものは破るってことだ。

 

大人には仕事上、信頼や利益、地位を構築していくために、守らなけれないけない「決まりごと」がたくさんある。
その「決まりごと」は会社が作っているもの、世間が作っているものもあって、それがまた会社や世間というものを作っている。
毎日が仕事と家の往復だと、つい、この「決まりごと」が全てのように見えてくるけど、なにもその「決まりごと」をプライベートや自分の人格にまで持ち込まなくてもいいとも思っているのだ。

 

私の場合、会社では、売り上げのために感情の振り幅は極力抑えた方がイケてるという共通の考えがある。
でも、その考えを自分の日常生活でも守らなくてもいいし、何を言われようが感情のぶれない人になろうと無理に頑張る必要もない。
家のソファで地球が滅亡する映画を見たときは、思いっきり泣けばいい。
「料理に味がない」と文句を言われたときは、いじけてコンビニ飯を差し出せばいい。

 

マダガスカルに住むGeckolepis megalepisっていうヤモリを知ってるだろうか?

何て読むんか分からないんだけど、とにかくこいつはニュータイプのヤモリらしい。笑

普通のヤモリは、敵に捕まえられそうになったとき、尻尾を自分の体と切り離して逃げる。
それでも結構衝撃的なのだが、このGeckolepisは、なんと鱗ごと脱ぎ捨ててしまう。
肉が露出するほどに自分の鱗を一瞬で落としてしまうのだ。
「しっぽだけじゃ逃げ切れないときあるし、いっそのこと皮膚全部脱ぎ捨ててやろうか」ていうその清さと大胆さとグロさが、さすがGeckolepisって感じだ。何て読むか知らんけど。

 

「決まりごと」を守らなくってもいいときは、それが身に染み付いてしまう前に、素早く「決まりごと」を脱いで、すっぽんぽんの自分になればいい。
Geckolepisみたいに、鱗をべらべらと剥がしてつるっつるになればいいのだ。
鱗は再生可能だ。すぐ生えてくる。
だから、安心して剥がしてしまえばいい。

 

社会というものに出て1ヶ月、つま先レベルで踏み出したからこそ、今感じたものがあった。
自分の正直なところの感情は何にも流されず、言葉に残していくのが自分にとっては必要な過程だなぁと思って。

at これは、洗濯機を机にしながらベランダで書いてます。